フランス共産主義者同盟の戦闘的行動綱 ―一九三四年――
以下の文書は、一九三四年六月、フランスにおけるトロツキスト組織たるフランス共産主義者同盟の行動綱領として発表されたものである。この行動綱領は、当時フランスにいたトロツキーも積極的に参加をえて作成されたものであり、一九三八年の第四インターナショナル創設国際会議で採択された『過渡的綱領』の具体的なさきがけをなすものであった。一九三八年の『過渡的綱領』は、いわばインターナショナルの文書としてその内容上多くの部分が一般的に定式化されているにとどまっているが、以下の行動綱領においてはフランスにおける実践的な行動綱領として様々の宣伝・煽動上の諸問題がより具体的にとりあげられている。この点において、われわれが第四インターナショナルの『過渡的綱領』を日本の今日の具体的諸条件のもとで現実に行動綱領化しようとするとき、以下の「フランス共産主義者同盟の戦闘的行動綱領」から大いに学ぶことができるだろう。
なお、同時期のトロツキーのフランスにかんする様々な論文とともに読むことによって以下の行動綱領の意味がより具体的にあきらかになるだろう。
―― 《国際革命文庫》 編集委員会――−
フランスのすべての被搾取者によびかける!
1 ファシズムと戦争がせまっている!
大資本によって指導されているフランスは、資本主義の崩壊のなかでよろめいている。社会の支配層のなかで、体制の一切の機関のなかでスキャンダルはたびかさなり、富める者の腐蝕的影響はひろがりつつある。
労働者にとって失業が、小農民にとって破産が、一切の被搾取者にとって貧窮が増大しつつある。
死滅しつつある資本主義は破産した。支配階級はこの歴史的破産から脱出する唯一のプランをもちあわせている。それは勤労階級のより一層の貧窮だ! 一切の改良、もっとも些細な改良さえもの抑圧だ! 民主主義体制の抑圧だ!
全世界でファシズムの鉄の踵が絶望した資本主義の最後の手段となりつつある。
一九一七年一〇月のロシア革命によって死の打撃をうけた帝国主義は、戦後の二つの時期におけるプロレタリア党の敗北――社会民主主義の全般的裏切――とこれら敗北につづく共産主義インターナショナルの堕落とによって、社会にたいするその支配を維持することができた。一九二三年のドイツ革命の敗北、一九二七年の中国革命の敗北、そして一九三三年と一九三四年のドイツとオーストリアのプロレタリアートの敗北が、資本主義がみずからを安定させることに成功した決定的時期をしるしづけている。
しかしながら、ソビエト・ロシアにおける旧支配階級の復帰が不可能なまま達成された不安定な勝利はただ一般的危機を尖鋭化するに役だつたけだった。世界市場における独占資本の圧力は、かつてなく暴力的かつ無政府的に、国境ならびに私的所有の原則と衝突している。
世界ブルジョアジーは、社会主義への革命的前進中のプロレタリアートの予備軍を利用して、最後の手段としてファシズムをもらい、それによって組織された労働者階級をその途上より掃討するために絶望的努力をはらっている。
これが、フランス・ブルジョアジーをファシズムにおしやりつつある国際情勢である。
しかしファシズムだけが、崩壊しつつある資本主義の最後の言葉なのではない。いかなる帝国主義も、その内部の敵とたたかうとき、外部へと拡大しなければならない。これがあたらしい世界戦争の源泉である。五千万人がこのまえの戦争とその余波の残虐な受難のなかで死亡した。全世界の労働者は、つぎの戦争において、いく億人も虐殺されるだろう。人口が停滞しているフランスは、他国以上にこれからのがれることはないだろう。
労働者は、ブルジョアジーのこれらの犯罪的計画に全力をつくして反対しなければならない。
2 フランス・ブルジョアジーの計画
この国がなげこまれた混沌から脱出することをこころみるために、フランス・ブルジョアジーはまず通貨問題を解決しなければならない。ある部分は、これをインフレーションによって、すなわち紙幣の発行、賃金の引下、生計費の高騰、小ブルジョアジーの収奪によっておこなおうとしている。他の部分は、デフレーションによって、すなわち労働者の背後での費用節減(俸給と賃金の低下)、失業の拡大、小農民と都市小ブルジョアジーの荒廃によっておこなおうとしている。
どちらの手段も被搾取者の窮乏を増大させる。この二つの資本主義的方法のあいだの選択は、搾取者が労働者のノドをかききるために用意している二つの道具のあいだの選択である。
乱暴なデフレーションはフランス資本家の計画における第一歩である。労働者は失業救済をうばわれつつある。社会保障はおびやかされつつある。賃金はひきさげられつつある。政府使用人はすでに打撃をうけた。つぎは小農民である。
これはブルジョアジーが、もし有利となれば、明日インフレーションという他の方法へ移行することをさまたげないだろう。ヒットラー・ドイツがいい例である。被搾取者は精力的にブルジョアジーのこの計画に反対しなければならない! デフレーション、つまり生産手段の圧縮の綱領にたいして、労働者はこの国を搾取しているウーストリックやスタヴィスキーの徒党の特権と利益の完全な「デフレーション」により社会関係を根本的に転形させる自らの綱領を対置しなければならない! これが救済の唯一の道である。
3 「企業の秘密」の廃止
われわれは、勤労大衆に有利な解決をみいだすために、遅滞なく資本主義の破産についての無慈悲なバランス・シートをひきだし、一切の階級、そして一切の社会的集団の収入と支出の清算をおこなわなければならない。
プロレタリアとあらゆる範疇の被搾取者にとって、これは困難ではない。労働者の賃金は資本主義の会計簿に記録されている。支出については、小企業家は毎週これを記録している。農民、職人、小企業者、小役人の収入と支出はだれにとっても秘密ではない。貪欲な銀行は、抵当によって農民の零落の増加率を正確に評価している。
しかし資本家、大搾取者はその秘密を注意ぶかくまもっている。この国の総生産をその一〇分の一を直接的に所有することによって支配しているトラスト、独占体、大会社は、決してその窃盗のはなしをしない。
この搾取者マフィアは「企業の秘密」の神聖によってみずからをかくしている。
企業の秘密は貧者の生活を統制し、「公共の福祉」と「国家経済」の外套のしたにかくれているスタヴィスキーやド・ヴァンデルのたぐいの富者の金融、産業、商業の一切を隠蔽するための策略にすぎない。
企業の秘密を打倒せよ! 犠牲を要求するものはみずからの帳簿を公開することから手をつけなければならない。こうして、かれらの不正があはかれるであろう。
4 銀行・産業・商業にたいする労働者・農民管理
ブルジョア民主主義は、勤労大衆に投票箱によってかれらの指導者を政治的に統制するという外観をあたえてきた。この外観が害をもたらさないあいだは、ブルジョアジーはこのような民主主義をゆるしてきた。しかしブルジョアジーは、無政府、破産、大衆の窮乏に到達するその経済管理、その搾取の基礎には統制の影だにゆるさなかった。
寄生的株主はかれらを富ませる企業がいかに活動しているかをしる権利をもつ。労働者、収奪される生産者はただ服従し、その口を閉じつづけなければならない。かれはただ機構の一部分にしかすぎない。
しかし労働者は機構の全部分をしりたいとおもう。かれらだけがその作用を判断することができる。経営の資本主義支配にたいして、勤労大衆の無慈悲な統制をくわえようではないか。
工場委員会、農民委員会、下級公務員委員会、職員委員会は、誠実な技師、技術者、労働者階級に忠実な会計係の援助をえて、きわめて容易に搾取者の「企業の秘密」をとりのぞくことができる。この方法によって、われわれは銀行、産業、商業にたいする大衆管理を確立しなければならない。
5 労働者へ!
この一般的アッピールのもとで、共産主義者同盟は労働者のためのつぎのような措置のためにたたかう。
1、週四〇時間、賃金引上
労働者管理は、生産力の水準が労働日の短縮をゆるすということを証明するだろう。鉄鋼委員会と石炭委員会のおえらがたやフィナリ、シュナイダー、スタヴィスキーの徒の費用で、勤労人民の物質的・精神的利益のための賃金引上。
2、真実の社会保障
まず第一に失業保険。すくなくとも年間一ヵ月の休暇。五〇才以上のひとに生活を可能とする退職年金。
3、同一労働同一賃金
婦人、青年、外国人、植民地人にたいする超過搾取の廃止。
4、婦人労働者に男子労働者と同一賃金、同一権利。
特別休暇による女性保護。
5、青年に成人と同一賃金
公共の費用による勉学と見習の普及。特別の衛生措置。
6、外国、植民地労働者にたいする一切の特別法律の撤廃
6 銀行・基幹産業・保険会社・運輸の国有
現在、銀行はこの国の一切の経済を支配している。しかしもし勤労人民が銀行を確保し、この手段をとおして産業、運輸、商業の管理を開始するならば、ただちに一般の生活水準は上昇するであろう。
銀行・大企業・運輸・保険会社の国有は、広汎な勤労大衆、全人民の福祉をめざす経済のための予備的条件である。
この国有は、多年のあいだプロレタリアの膏血をしぼることによって致富した、そしてただ悲惨と経済的無政府だけをさしだすことができた大資本家に対して補償をあたえてはならない。
大生産手段、大交換手段の国有は、小農民、小商工業の破壊を絶対的に意味しない。その反対に、特権的大独占は小企業を抑圧するものである。
小企業は自由にのこされなければならないのみならず、労働者は大企業を国有化したのちかれらを援助することができるだろう。銀行、トラスト、コーポレーション等によって蓄積された巨大な富に基礎をおいた計画経済は、まったく有利な条件のもとで国家の注文、原料、信用を小生産者に提供する生産と分配の計画の確立をゆるすであろう。こうして、農民は低価格で農業機械や肥料をうけとるであろう。
労働者による国有は、大私的独占の破壊、小企業の支持、生産者大衆の利益のための製品の再分配を意味する。
7 外国貿易の独占
一切の外国貿易は国家の手にわたさなければならない。こうして貿易は消費者の利益を顧慮しないで輸出・輸入を規制する私的独占によってはもはや統制されなくなるだろう。広汎な大衆にとって評価しようもないほどの利益が全国の生活と世界市場のあいだへのこの干渉をつうじてうみだされるだろう。だから労働者によって支配される国家だけが、全体の利益のために外国貿易一切を実際に統制するようになるだろう。
8 労働者と農民の同盟
農民はフランスの人口のほぼ半数をしめている。プロレタリア国家は、都市と農村の労働者と同様に被搾取農民に依拠しなければならない。われわれの綱領は、労働者階級の要求と同様に広汎な農村大衆の要求にこたえている。
われわれは、われわれの最終目標は――進歩のより高い形態としての――工業ならびに農業の集団化であることを確認する。しかしプロレタリアートはこの目標を農民に強制することはできない。かれらはこの目標への発展を容易にすることだけができる。プロレタリアートは、資本主義搾取者によってともに抑圧されている二つの階級の共通の経験をとおして完成され、修正され、拡大されるにちがいない方針を提案することだけができる。われわれは、まず農民にたいして、かれら自身の運命、かれらの精力とかれらの所有の使用を決定する現実的機会、農耕方法に関するかれらの選好を表明する現実的機会、私有経済から集産経済へ移行する時期をかれら自身の判断で選択する現実的機会を保証しなければならない。
農村人口は均質というにほどとおい。支配階級とそれに従属する教師は、少数者が土地所有の大部分を独占し、信用はいうまでもなく最良の農業生産手段(機械、トラクター、家畜など)をその手に集積している事実を注意ぶかくおおいかくしている。
われわれは即時つぎの措置をとるための闘争を提案する。
1、都市労働者と農業労働者の同権
協約、労働時間、休暇、社会保障(失業保険)に関する一般法規、労働法規は完全に農業労働者にも適用されなければならない。
2、大所有、大土地、模範農場の収奪
集産的=協同的農場と小農民のために。
3、分益小作制の廃止
県ごとに選出された農民委員会による現行借地契約の改訂。
4、抵当権の改訂
モラトリアム。一切の告訴と流質の停止。
9 全体のための社会的サービス!
国家の大きな機関(郵便局、税関、教育など)は数百万の労働者を搾取して、資本主義の利益のために機能している。最近のいくつかのスキャンダルは高級公務員にひろがっている腐敗を暴露した。
下級政府使用人は、所有階級が勤労者をもっとしぼることをゆるすためにその官職を利用している腐敗した高級公務員によって搾取されている。
われわれはきれいに掃除をしなければならない。下級政府使用人の委員会と労働組合は、一切の被搾取者の協力をえて、勤労大衆によって勤労大衆のために機能する真実の社会的サービスを確立するために必要な変化をもたらすだろう。
10 警察の解体と兵士のために政治的権利を!
政府は、警察や機動隊、そして軍隊を発展させ、武装させるために、一言にしていえば内乱を発展させるためのみならず、帝国主義戦争を準備するために、貧民から、被搾取者から、あらゆる階層の人民から数十億フランを強奪している。陸海軍にいく十万となく動員された青年労働者は一切の権利をうばわれている。
われわれはクーデターの道具である反動的ファシスト的士官・下士官の罷免を要求する。他方、軍隊にある労働者は一切の政治的権利を保持し、特別の集会で選出された兵士委員会によって代表されなければならない。こうして、かれらは、広汎な勤労者大衆と密接な結合を維持し、反動とファシズムに反対する組織され武装した人民とその勢力を統一させるだろう。
資本家の意志によるブルジョア国家とその腐敗した政治家徒党の警察機構の一切は解体されなければならない。労働者民兵による警察義務の執行、階級裁判の廃止、一切の裁判官の選挙、一切の犯罪と一切の非行への陪審の拡大。人民はみずから裁判官になるだろう。
11 分離権を含む諸民族の自決権
強盗的ヴェルサイユ条約は全ヨーロッパの労働者にとってのみならず、「戦勝国」フランスの労働者にとっても残虐な災害の源泉である。ブルジョアジーは、この条約によって、みずから(ドイツの)ザール地方について要求したような人民投票さえもとおさないでアルザス・ローレンを併合したが、この条約からうまれた国際関係の防衛はいまや戦争への道である。
フランス・ブルジョアジーはヨーロッパ全域を間接的に抑圧しているのみならず、広大な植民地をあれるにまかせ、おしつぶしている。フランスの大資本――ド・ヴァンデルやミシュランの徒、パリの銀行その他――によって抑圧されている一切の人民、アルザス・ローレンやインドシナ、モロッコ、マダガスカルの人民のために、われわれは、かれらがそれを希望するならば分離権をふくめての完全な自決の権利を要求する。
この国の勤労大衆はフランスの諸銀行が他の人民にたいする支配を維持するのをたすけるに関心をもたない。その反対に、自己の闘争の同盟軍や支持者を獲得することによって、勤労者は解放闘争を援助しつ
つあるのである。
12 戦争反対! ∃−ロッバ社会主義連邦を!
われわれは、社会を転形し、混沌からひきだすために、まずこの社会をブルジョアジーがふたたびなげこもうとしている戦争からすくいださなければならない。
ドイツ・ファシズムのうごきに抗して、フランスの資本家は犯罪的ヴェルサイユ条約を遵守する諸国家のブロック政策をもちだした。フランスは、勤労人民にたいして軍備競争の巨大な費用の重荷をせおわせながら、平和主義のベールをその行動にかけるために、貪欲なブルジョアジーの結集体である国際連盟を使用している。そして「安全保障」の「防衛的」偽りは排外主義的発作がその活動をつづけ、この国を明日の巨大な虐殺へなげこむのをゆるしている。
プロレタリア、農民、商人、職人、政府使用人は、かれらの統制の一切の形態を確立することによって秘密外交を暴露することによって、一切の手段で戦争準備に反対することによって、政権を帝国主義の手中からもぎとることによってのみ、(戦争とその大虐殺の)将来を回避することができる。
ただフランスの革命的勤労者だけが帝国主義戦争の一切の可能性を排除し、ヨーロッパと植民地の被抑圧人民を覚醒させることができる。そのとき協定や条約はほうむりさられてしまうだろう。一九一九年当時かんかえられたように、唯一の可能な解決は「ヨーロッパ社会主義連邦」であるだろう。
帝国主義のブロック政策反対! 国際連盟の平和主義的欺瞞反対! 戦争の秘密外交と軍備拡張の狂気反対! あたらしい戦争による全体的破壊によっておびやかされ、分割された、軍事化された、血によごれたふるいヨーロッパ大陸のうえに、われわれは唯一の解放の旗、ヨーロッパ労働者農民合衆国、ソビエト国家の友愛的連邦の旗をかかげる。
13 ソビエト同盟の防衛のために
あらゆるプロレタリアにとって,この方向への第一歩はソビエト同盟の無条件的防衛である。そこでは一九一七年の十月革命が大資本家の私有財産の廃止に基礎をおいたプロレタリア独裁の最初の経験の偉大な土台を創造した。
ソビエト同盟にたいする闘争はなお世界帝国主義反動にとって基本的目標である。
フランスの勤労者は、ブルジョアジーの「平和」計画を暴露することによって、ソビエト同盟の防衛のためにたたかうだろう。協定と条約は現実にはソビエト・プロレタリアートを防衛しないだろう。他の諸国におけるブルジョアジーの打倒のための革命的闘争だけが、ソビエト・プロレタリアートを防衛するであろう。
フランスとロシアの社会主義共和国の同盟は国際プロレタリアートの連帯を拡大するだろう。バルトウ、タルディウ、エリオやかれらの帝国主義ギャングとの妥協ではない、ただこれらの広汎な手段だけが大衆を困窮よりすくい、社会主義へみちびくことができる。今日より、一切の勤労者はこれらの実践のために精力的にたたかわなければならない。
そのうえ、これらの手段は個人的行動によって、一、二のグループの行動によっては充分に実行することはできない。それはただ――全国の経済、政治、文化を掌握している国家権力をとおしてのみ実行することができる。それはだれの手に掌握されているか? これが問題のすべてである!
14 ブルジョア的「権威主義国家」を打倒せよ!労働者、農民権力のために!
ブルジョアジーは、労働者の抵抗を断乎として排除するために、国家権力の転形の計画、すなわち被選挙民主主義機関(議会と自治体)の権限の縮少、それどころかこれら権限の完全な禁止などに着手しはじめている。なぜならば、プロレタリアの圧力がそこでは屈折させられながらも、反映されるからである。
ブルジョアジーは、野蛮で無制限な、そして費用のかかる行政的、軍事的、警察的機構を手段として決定を強制する少数のひとの手中に執行権力を集中しようとこころみている。
被搾取者にむけられた「権威主義国家」のブルジョア的計画は、勤労大衆によって無慈悲に攻撃されなければならない。
ただ勤労大衆だけが、強力な革命的推進力によってかれらの未来をかれら自身の手におさめるために、社会を腐蝕させ荒廃にみちびく資本主義裏頭制から社会をすくうために必要な大きな権力を精力的に鉄の意志をもって創造することができる。
任務は、大搾取者の利益のために機能しつつある資本主義国家を労働者と農民のプロレタリア国家におきかえるにある。任務は、この国に勤労人民の支配を確立するにある。われわれは、それは第二次的「改良」の問題ではなく、ブルジョア階級というちっぽけな小数者の支配が勤労人民というかぎりない多数者の指導と権力によっておきかえられなければならないとはっきりと宣言する。
農民と労働者の同盟がこのために必要である。反動は、農民を労働者に隷属させるプロレタリア独裁の幽霊で農民をおどかそうとこころみる。しかし現実にはプロレタリア国家は、プロレタリアートが農民から隔離されているかぎり実現することができない。
ソビエト・ロシアの十月革命の実例はわれわれをたすける。だから、フランスにおいてはわれわれはロシアの兄弟よりもより巧妙におこない、かれらの誤謬のあるものをさけることができる。フランスの経済的水準はよりたかい。われわれはわが国の現在の諸条件と一致して行動したいとおもう。明晰、的確な綱領とプロレタリアートと被搾取農民のあいだの緊密な理解にもとづいてこそ、プロレタリア独裁を確立することができる。
農民は分散している。このことが、その人口、生産におけるその重要性にもかかわらず、その政治的無力の諸理由の一つである。農民は、ブルジョアジーにたいして労働者と提携することによってのみ権力を手にいれることができる。
15 労働者・農民コンミューンのための闘争
農民と労働者の同盟は、労働者階級がその実力を、その断乎たるイニシアチブを、その綱領を実現する能力をしめしてのみ、実現されるだろう。これがわれわれがまず行動の統一の諸条件を創造しなければならない理由である。諸政党、様々な労働組合の労働者共闘が組織され、勤労人民の全勢力を例外なく統一しなければならない。
労働者共闘の全国委員会、地方委員会、地区委員会が組織されなければならない。労働者によって選挙された職場委員会の創造。
これらの労働者共闘委員会、その大衆のなかでの権威かうみだした衝撃は、農村の勤労人民にみずからを農民委員会に組織するよう鼓舞するだろう。
ファシズム、反動、戦争に反対する闘争においてプロレタリアートは小ブル的諸グループ(平和主義者、人権同盟、フロン・ユマンなど)の援助をうけいれる。しかしこのような共闘は第二次的重要性しかもちえない。なによりも、任務は工場と工業中心地附近の労働者階級それ自体の統一行動を確保することにある。重要な労働者組織(共産党、社会党、CGT、CGTU、共産主義者同盟)の共闘は、それがつぎのような組織の創造を志向しないかぎり、革命的価値をもたないだろう。
1、大衆それ自体を代表する共闘委員会(ソビエトの萌芽)。
2、各種政党、組織によって組織されながらも、つねに行動において統一された労働者民兵。
労働者委員会は、労働者、農民両者の闘争を強化するために、農民委員会との密接な協力を確立しなければならない。ファシズム反対の人民的防衛の機関として構成された労働者共闘委員会と農民委員会は、闘争の過程のなかで大衆によって直接選挙される機関、労働者と農民の権力機関とならなければならない。この基礎のうえに、プロレタリア権力は資本主義権力と対立するようになり、労働者・農民コンミューンが勝利するであろう。
16 一院制議会を
こうしてわれわれは、搾取者から権力をうばうであろう労働者・農民国家の断乎たる闘士である。この綱領のもとにわが労働者階級の兄弟の多数を獲得するのが、われわれの第一の目標である。
しかし、労働者階級の多数がブルジョア民主主義の基礎にたちつづけるあいだは、われわれはそれを全力をつくしてボナパルティスト的、ファシスト的ブルジョアジーの暴力的攻撃から防衛する用意がある。
しかしながら、われわれは「民主主義的」社会主義に執着するわが階級的兄弟にかれらがかれらの思想に忠実であること、かれらが第三共和国ではなく、一七九三年の国民公会の思想と方法から霊感をひきだすことを要求する。
制限選挙権により選出され、普通選挙権の権利を単なる幻想とする上院を打倒せよ!
軍国主義と反動の諸勢力のかくれた集中点としてはたらく共和国大統領制を打倒せよ!
一院制議会は立法権と執行権を結合しなければならない。議員は二年ごとに、性と国籍の差別のない一八才以上の普通選挙権によって選出されるだろう。議員は地方議会を基礎として選出され、その構成員によりいつでもリコールされうるだろう。そして熟練労働者なみの俸給をうけるだろう。
これが大衆をおしかえすかわりに、逆におしすすめるであろう唯一の手段である。よりきまえよい民主主義は労働者権力のための闘争を容易にするだろう。
もし、敵との非協力的闘争の過程のなかで、われわれとは理論と方法においてどうしようもない相違によりわかたれている「民主主義的」社会主義の党(SFIO―フランス社会党)が多数者の信頼を獲得するならば、われわれはブルジョアジーからSFIO(フランス社会党)政府を防衛する用意があるし、こんごもあるだろう。
われわれはわれわれの目標を勤労者の各種グループのあいだの武装闘争によってではなく、真実の労働者民主主義、そして宣伝と誠実な批判によって真実の共産主義の旗のもとへプロレタリアートの圧倒的多数者を自発的に結集することによって達成しようとのぞんでいる。
民主主義的社会主義に執着する労働者は、さらに民主主義を防衛するだけでは不充分であることを理解しなければならない。民主主義はとりかえされなければならない。政治的重心の議会から内閣へ、内閣から金融資本・将軍・警察の寡頭制への移動は既成の事実である。いまの議会も、あたらしい選挙もこれをかええない。われわれは民主主義のかなしい遺物を防衛することができる。とくにわれわれは、一九三四年二月六日に国家の基軸をうごかしはじめ、いまなおうごかしている武装ファシスト勢力を絶滅することによってのみ、大衆の活動のための民主主義的舞台を拡大することができる。
17 ブルジョアジーは決して自発的に断念することはないだろう
ブルジョアジーは決して自発的に社会を混沌からひきだす手段に同意することはないだろう。それはその特権の一切を継続させようとのぞみ、それを保護するためにファシスト・ギャングを使用しはじめている。
われわれのスローガンは、金融資本自身の警察による金融資本のファシスト・ギャングの武装解除ではない。われわれは、資本主義政府がいま資本主義ギャングの武装解除を着手するだろうという犯罪的幻想をひろめることを拒絶する。被搾取者は資本家からみずからを防衛しなければならない。
プロレタリアートの武装、貧農の武装!
人民の反ファシスト民兵を!
労働者が武装し、大衆を指導しているばあいだけ、ほんの少数にすぎない搾取者は内乱の危険のまえに退却するだろう。ファシスト的・反動的ギャングはその勇気をうしなうだろう。
労働者がこの道をとるばあいにだけ、すなわちわれわれの階級的出身と階級的義務をおもいおこさせなければならない勤労人民の子供である兵士と水兵の大多数が労働者の立場に獲得され、かれらを自己の階級に対して使用しようとしている反動的・ファシスト的将校にさからって労働大衆の側にたつだろう。
任務は巨大である。しかしそれが救済への唯一の道である! 共産主義同盟はその道をしめす。
諸君の労働によってのみ存在できる社会は、支配者ブルジョアジーがそのただ一つのけがらわしい特権をも断念しないがゆえに、くさりつつある。それを保持するために、ブルジョアジーは諸君の存在をおびやかすファシスト・ギャングを用意している。
二月十二日に諸君は諸君の実力を、この暴力に屈服しないという諸君の決意を表明した。しかしその日、諸君の指導者は諸君をうらぎった。かれらは諸君になんら具体的なスローガンも、闘争の誠実な展望もえがいてくれなかった。諸君の実力を発揮するために、諸君の生る権利を防衛するために、はじしらずの搾取者という少数者の致富のためにはもはや働かないために、諸君の革命を準備せよ。共産主義者同盟の行動に参加せよ!
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