(1)昨年十二月十八日、中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)の元政治局員で、一九五九年の革共同全国委員会創設以来の指導部だった白井朗氏の自宅(埼玉県春日部市)に、数名の者が押し入って白井氏を襲撃し、白井氏に全身打撲、両腕脱臼、肋骨骨折、右足骨損傷などの重傷を負わせた。
それから一週間後の十二月二十五日には、同じく中核派の元幹部で、中核派を離脱して盗聴法や住基ネットに反対する市民運動を担っていた角田富夫氏が、自宅近くの東京都中野区の路上で襲撃され、右目上裂傷、肋骨骨折などの重傷を負うという事件が発生した。 白井朗氏は、この間、自らが指導してきた中核派のスターリン主義そのものの実態を批判する執筆活動を続けていた。中核派は二〇〇一年に開催したと称する「第六回全国大会」特別決議で白井氏を「革共同から逃亡した反革命」と規定し、その「断固たる粉砕」を呼号していた。実際、白井氏は二〇〇一年一月に何者かによって自宅に放火されるというテロ襲撃を受けている。
角田富夫氏は、公安調査庁のスパイとして活動してきた宮崎学を中核派が利用し、自らの組織情報を握られてきた問題を、中核派が隠蔽し、あいまいなままにしてきたことについて明らかにする言論活動を行ってきた。中核派は角田氏についても、小西誠氏らとともに「政治警察・公調およびスパイ三島(弁護士の三島浩司)と同じ立場に移行」し、「革命党に敵対する反革命の共同戦線をつくる役割を果たしている」(「前進」02年3月4日号、「反軍闘争に敵対し反階級的転向分子に転落した小西誠」)と主張していた。
(2)この許すことのできない卑劣きわまる犯罪が何者によってなされたのかについては、いまだ推測の域を出ない。「犯行声明」も出されてはいない。しかしわれわれは、この白井氏、角田氏へのテロ襲撃が同一の政治的目的を持った一連の行為であると断定せざるをえない。
国家権力・警察当局は、被害者である白井、角田両氏の自宅を不当に家宅捜索し、住所録、書籍、フロッピーなどを押収していった。また小西誠氏の声明によれば、この襲撃事件とはなんの関係もない小西誠氏が経営する(株)社会批評社や、小西氏とともに活動している反軍兵士の自宅にも家宅捜索に押しかけ、社会批評社への捜索は小西氏の抗議によって断念したものの、反軍兵士の自宅については捜索を強行して書籍を押収した、という。
この点から見ても、今回のテロ襲撃が、労働者・市民運動に対する警察権力の介入と弾圧の口実を与える反動的な犯罪行為であることは明白である。
十二月三十日、盗聴法に反対する市民連絡会は、同連絡会のメンバーである角田氏襲撃についての声明を出した。同声明は「今回の凶行は、誠に許し難い卑劣な行為であるとともに、私たち平和を目指すすべての市民に対する挑戦だと考えます」と述べるとともに、「今回の凶行を行った人々とは運動をともにすることをできません」とする断固たる立場を表明している。われわれは、盗聴法に反対する市民連絡会の声明を支持する。
(3)われわれは、日本新左翼運動における「内ゲバ」の犯罪性を当初から指摘し、内ゲバを大衆運動の場から一掃することを一貫して主張してきた。とりわけ革マル派、中核派、解放派などによる殺人を自己目的化するまでに至った内ゲバのエスカレートが、どれだけ大衆運動の発展に打撃を与え、警察権力に弾圧の口実を与えるものであるかを厳しく批判し、内ゲバ党派を共同行動の対象とは見なさない立場を堅持してきた。
われわれは、一九八四年、中核派の内ゲバ襲撃によって八人の同志が片足切断をふくむ重傷を負った時にも、大衆運動によって彼ら内ゲバ主義者を包囲し、糾弾する闘いを展開してきた。
われわれは、中核派から離脱した白井、角田両氏が、かつて中核派の指導的幹部として内ゲバ襲撃のエスカレートに責任を負っていたことに対し、明確な態度表明や自己批判を行っていないことを批判する。白井氏や小西氏による中核派のスターリン主義や内ゲバ主義に対する批判は、重要で積極的な転換ではあるが、対革マル「内ゲバ戦争」との関係で、その思想的根拠に対する批判はいまだ限界を持ったものである。しかしそのことによって、今回の白井、角田両氏に対するテロ襲撃を労働者・市民運動、ならびに革命をめざす闘いに対する敵対以外のなにものでもないとして厳しく批判するわれわれの立場は、なんら変わるものではない。
中核派は、自らが「反革命」として「粉砕」の対象に挙げていた白井、角田両氏へのテロ襲撃に自ら関与しているのかいないのか、はっきりとした形で表明すべきである。そしてもし関与していないと主張するのであれば、この暴挙に対してどのような態度をとるのか、機関紙上ではっきりと表明すべきである。
われわれは白井、角田両氏へのテロ襲撃を断固として糾弾するとともに、この犯罪を実行した組織を大衆運動、共同行動の場から排除するために闘う。スターリン主義そのものに他ならない内ゲバ主義の一切の表現と闘い、それを一掃することに労働者・市民の未来がかかっているのである。
同時にわれわれは、今回の事件をも契機とした警察権力による大衆闘争への弾圧・介入の拡大に対して、あらためて警戒を強めることをすべての人びとに呼びかけるものである。(二〇〇三年一月)
かけはし1月20日号より転載
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