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「革命的潮流の勝利」

   ベトナム民主共和国労働党機関紙「ニャンザン」(一九七二年八月一七日付)論説(全文)

 大きな意義をもつ重要な国際的政治事件が、このほどギアナのジョージタウンて開かれた非同盟諸国外相会談で起こった。世界の国ぐにのおよそ半数、あわせて十億以上の人口を擁する国ぐにを代表するこの会議は、植民地主義に反対し、帝国主義の侵略戦争に反対し、平和と民族独立をめざす闘争にかんする諸問題が討議の焦点となり、これらの問題について多くの決議を採択した。会議は南ベトナム臨時革命政府代表団とカンボジア王国民族連合政府代表団を正式代表として受けいれた。

          

 ジョージタウン会議は明らかに、諸民族、とりわけアジア、アフリカ、ラテンアメリカの諸代族の連帯の会議、そして、アメリカを先頭とする帝国主義と植民地主義への反対の会議である。一九六一年九月に開かれたこの種の最初の会議以後、非同盟諸国の運動は、参加国数の上でもその会議の内容の上でも新しい発展の足取りを示してきた。二十五ヵ国ではじまったこの会議は、いまでは六十四ヵ国と六つの民族解放運動を擁している。帝国主義、植民地主義、新植民地主義に反対する声は、いますべての大陸にもりあがっている民族解放運動を前に、これに逆行する声をますます圧倒しつつある。
 南ベトナムの抵抗運動の代表とカンボジアの抵抗運動の代表の正式参加が認められたことは、他の諸国民がインドシナ人民の正義の闘争にたいしていだいているあたたかい感情のあらわれである。それはベトナム問題と他のインドシナ諸国の問題の正しい政治的解決についてのわれわれの立場にたいする強力な、貴重な支持である。
 この支援はインドシナ三国人民が、アメリカの侵略に反対し祖国を救うための自分の抵抗運動を、この立場が完全に勝利するまで断固としておしすすめるのを励ましている。アメリカ帝国主義が、南ベトナム臨時革命政府とカンボジア王国民族連合政府を否認しようとして、「ニクソン・ドクトリン」にうったえ、一連の諸国間の緩和を利用しているときにおきたこの事件は、インドシナ諸民族の正義の愛国闘争によせる第三世界諸民族の熱烈な感情をはっきりと示しているのである。この承認は、自分の運命を自分自身の手に握ろうとする第三世界諸民族の意思、かれらの利益と願いを無視して一部の諸国とのあいだで国際的諸問題を解決しようとするアメリカ帝国主義者のあらゆる策動に反対する第三世界諸民族の意思を確証したものである。

          

 第三勢力を代表する非同盟運動は、世界に二つの社会体制――社会主義体制と資本主義体制が形成されたあとに出現した。第三世界に属するのは、植民地主義支配を脱した諸国、あるいは、民族独立を達成するためのたたかいをおしすすめている国ぐにである。したがって、これらの国ぐには、当然、偉大な反帝国主義勢力をなしている。たえまなく発展する独立運動は、歴史のひとつの潮流となった。そしてそれは、他の二つの潮流――。社会主義の潮流および平和と民主主義の潮流とともに、帝国主義と植民地主義を根底からゆるがす力強い革命の奔流を形づくっている。革命の嵐がアジア、アフリカ、ラテンアメリカにまきおこっている。この嵐の中心は、実際の行動を通じて全人類に認められたように、ベトナムと他のインドシナ半島諸国にある。インドシナ半島が、国際憲兵であり、すべての民族の第一の敵であり、今日の世界の最大の搾取者、侵略者であるアメリカ帝国主義によって、民族解放運動を阻止すべき主要な場所として、その新植民地主義戦争のさまざまな戦略の実験場として選びだされたからである。ベトナム、ラオスおよびカンボジア人民の勝利とアメリカ侵略者の敗北が、民族解放運動、平和と民主主義の運動を促進し、社会主義諸国の安全確保をたすけ、アメリカ帝国主義を弱めるうえで重要な役割をはたしているのはそのためである。
 その役割と性格からして、インドシナ諸国の愛国闘争は、社会主義諸国の、さまざまな国ぐにの労働者階級の、平和と独立と自由を愛する諸民族の、そして、全世界の進歩的な人びとの同情と支持を得ている。

          

 第二次世界大戦以後アメリカ帝国主義がおしすすめてきた世界戦略のなかで、新植民地主義の諸形態はその重要な部分をなしている。それは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける古い型の植民地主義の他のさまざまな帝国主義勢力を、アメリカの新植民地主義にとってかえること、そして世界とこれらの広大な地域をアメリカの銃後にし、社会主義諸国を包囲し封じ込め攻撃するための足場にし、還にすることである。しかし、アメリカのこの戦略は、世界に深刻な変化がおこり、社会主義制度が人類社会の発展傾向を決定する要因となり、歴史によって断罪された帝国主義と植民地主義が危機と解体の過程にあり、どれい化された諸民族が独立と自由のもとに生きる権利をもとめて立ち上がったときに生まれた時代錯誤である。
 アメリカの軍事・産業体の政治的代表者として、ニクソンを頭目とする最大の反動と戦争気ちがいの一味は、「ニクソン・ドクトリン」とよばれる新しい世界戦略を遂行している。この戦略のなかでは、諸大国間の力の均衡と、社会主義諸国の分裂、とくに社会主義陣営の主要な構成部分のあいだの分裂が、アメリカ帝国主義に、民族解放運動を暴力によって阻止し、第一にインドシナ半島の諸民族の愛国闘争をはねかえす完全な行動の自由をあたえるタテとみなされている。南ベトナムの三月三〇日以来のたえまない攻勢と決起は「ベトナム化」戦略の背骨をたたきおり、大きく崩壊させている。侵略者は、「ニクソン・ドクトリン」がこの戦争にさだめていた制限をはるかにこえ、急きょアメリカの巨大な空・海軍力を投入して戦争をふたたびアメリカ化せざるをえなかった。しかし、アメリカのこの巨大な物質力と技術力、その空前の残虐行為をもってしてもベトナムの両地域の人民の武装勢力と人民の英雄的な闘争をおしとどめることはできなかった。それはラオスとカンボジアの抗戦勢力の勇敢な闘争を阻止することもできずにいる。アメリカ侵略者の完全な敗北は避けられないのである。
 ニクソンがあらゆる手段でおさえこもうとしている間にも、民族解放運動はひきつづきさまざまな国ぐにで発展している。この数年間にもわれわれの目の前で、バングラデシュ、スリランカその他多くの独立国が出現し、それは自由な諸民族の隊列をたえまなく拡大している。アメリカのすぐ近くで開かれたジョージタウン会議は、この新しい情勢の反映である。この会議は明らかに、時代の新しい潮流を体現している。それは、帝国主義のあらゆる卑劣な策動をのりこえ、あらゆる右翼的諸傾向と無原則な妥協にもかかわらず、自分の運命を自分でつくりあげようとする諸小民族のたたかいという潮流である。
 民族解放運動とジョージタウン会議の勝利は、実際、「ニクソン・ドクトリン」のひとつの失敗である。この勝利は、現代の偉大な無敵の革命思想から逸脱し、みじめにも暗黒の泥まみれの妥協の道にはまりこんでいるものたちへの深刻な警告である。

          

 現在、基本的な世界情勢はどうなっているのか? 革命勢力が帝国主義勢力を後退させているのか。それとも帝国主義が思うままにことをはこんでいるのか。世界革命は攻勢途上にあるのか。それとも後退途上にあるのか。どちらの勢力が歴史の進路を決定しつつあるのか。世界革命の主要な敵はだれか。どこに革命があり、どこに反革命があるのか。かつては難なく答えられたこれらの問題が、今日、不健全な諸傾向のために、当惑をよぶ問題となっている。いっそう悪いことに、ずるがしこい帝国主義者が、全般的な混乱につけいって、善と悪、黒と白を転倒させている。
 アメリカ侵略者に反対し、平和、民族独立、民主主義と社会主義をめざす闘争の最前列に立っているベトナムの革命家と人民にとっては、これらの問題を解明することは、知識の分野でも実践の面でも重要な意義をもっている。
 われわれの生きている時代は、不敗のマルクス=レーニン主義思想が幾千万、幾億の人びとの心と胸をとらえ、科学的社会主義が十億以上の人びとにとって生きた現実となって、歴史の発展傾向に深刻な影響をあたえつつある時代である。
 歴史によってまれな特典にめぐまれたわれわれの世代は、その過半数が百年、あるいは数千年間みられなかったような大きな革命的変化をつぎつぎに見てきた。われわれはほとんど、ほんの数年ごとに、革命ぼっ発と成功を、数かずの独立国の出現を見てきた。
 われわれは、以前は永久に他国民を支配し続けるものと思われていた帝国主義勢力が、つぎつぎに解体し、崩壊するのを見てきた。アメリカ帝国主義のおそるべき力、ほとんどだれも比肩できない力というつくり話は、とっくのむかしに煙となって消えた。アメリカの科学・技術革命の「奇跡」も、その否定的な面を露呈し、帝国主義の大きな生産力をもってすれば経済恐慌をまぬがれ、革命をしりぞけることができるというあやまった見解は、今日、現実によって打ちくだかれている。
 革命を堅持し、マルクス=レーニン主義に忠実な人びとは、あらゆる種類の日和見主義の諸傾向が、かつて思いあがっていた諸勢力を含めて、つぎつぎに破産し挫折するのを見てきた。

          

 しかしながら、現在の緩和は、変化した世界情勢の産物である。すなわち、革命勢力が、なお前途に克服すべき多くの困難をかかえているとはいえ引き続き発展しており、一万、帝国主義がその全般的危機の新しい時期をむかえている情勢の産物である。帝国主義の本塁であり最後の支柱であるアメリカに、全般的な、先鋭な危機がおこっている。アメリカは、ベトナムでこうむった手痛い敗北を含め、いたるところでくりかえしこうむっている敗北によって、「粘土の足の巨人」となった。当のアメリカで、人民大衆、とくに青年が、アメリカの政策転換を要求している。
 さまざまな諸国間の真の緩和の政策は、大小すべての民族の独立主権、統一、領土保全の尊重を土台としなければならない。しかしアメリカ帝国主義者にとっては、緩和は、侵略、奴れい化、破壊工作、平和的進化を新しい手段で実現するための、いいかえれば「ニクソン・ドクトリン」を実行するための権謀術数の政策にすぎない。帝国主義者は、新しい世界戦争を準備する計画を放棄することなしに、自分の勢力を強め、世界の革命運動に反対し、国内の革命運動に反対し、国内の革命をおさえこみ、諸国を圧迫し、民族解放運動をうちくだく行動の自由をえることを期待して、一連の大国にたいして緩和の政策をとっているのである。

          

 社会主義諸国にとっては、平和を守り、平和共存を実現することは独立、民主主義、社会主義をめざす世界の運動ときりはなすことができない。もしも一国のせまい目先の利益だけをもとめてそれをはかるならば、それは各国の革命運動に損害をあたえるだけでなくひいては、当のそれらの国ぐににはかり知れない損失をもたらし、その崇高な国際主義的義務を放棄させることになるだろう。マルクス=レーニン主義とプロレタリア国際主義の生命力は、なによりもまず、革命的行動にあらわれるのであって、空虚なことばにあらわれるのではない。われわれは今日の世界で、一国の真の利益と世界革命の共通の利益とが衝突することは、ごくまれであることを示す多くの実例をもっている。帝国主義諸大国との原則的な緩和の政策は、革命勢力をうちかため強化すること、階級敵を孤立させ分化させること、革命のほこ先を向けて帝国主義の頭目の好戦勢力のたくらみに反対することを目ざさなければならない。ある条件のもとでは、革命勢力の攻勢をうながすために若干の緩和をおこなうのは正しいことである。しかし、もしも自国のせまい利益から出発して、もっとも反動的な勢力が危険な打撃を受けるのをまぬがれるのに手をかすならば、それはおぼれる強盗に浮き袋を投げあたえるようなものであり、敵に有利で革命に不利な悪質な妥協である。
 世界的規模での資本主義から社会主義への過渡期を通じて、「だれが勝つか」、社会主義か資本主義かという問題に決着をつける闘争は、長期の、困難な、複雑な闘争であり、しかも、非常に多様な形態、内容、具体的措置をともなう闘争でもある。それは暴力的および非暴力的闘争であり、軍事、政治、経済、イデオロギーの諸分野における闘争である。立ちあがっている革命的潮流は、実際に、この過渡期における発展の構成部分である。平和を守り、世界戦争を防止し、必要に応じて原則的な緩和をおこない、大衆の革命闘争の可能性を拡大すること、これだけが革命的政策である。

          

 われわれは、社会主義勢力を強化し増大させることを重要な歴史的任務と考えている。世界にはまだ、解放をかちとらなければならない国ぐにがたくさんあり、どれい的労働から解放されなければならない労働者が幾億人もいる。
 世界社会主義体制の存在と発展は、歴史の発展方向を決定する要因である。しかしこの方向は、幾億の人民のねばり強い革命闘争を通じてはじめて現実となることができる。
 各国の革命は世界革命の不可欠の構成部分であり、すべての国ぐにの革命は、たがいに促進し援助しあう効果をもつ。
 一国の革命の勝利は終点ではなく、世界的規模での共産主義の勝利の長い旅程のはじまりにすぎない。社会主義と共産主義は、封建制度と資本主義よりも何万倍もよい。資本主義的民族主義と民族利己主義に比べると、プロレタリア国際主義は光とやみのちがいである。革命の道はかおり高い草花にみちている。日和見主義は悪臭にみちた泥沼である。われわれ共産主義者は革命を堅持しなければならず、妥協してはならない。わが党の指導のもとに、わがベトナム人民は過去数十年間つぎつぎに、三つの野蛮な帝国主義と反動勢力、その手先にたいして、ねばり強くたたかってきた。幾十万のわれわれの同志、幾百万のわれわれの同胞が、祖国の独立と自由のため、世界の労働者階級と被抑圧人民の解放のためにりっぱにいのちをささげた。われわれはマルクス=レーニン主義の立場に確固として立っている。これはまた、愛国主義とプロレタリア国際主義の立場でもある。われわれはがん強不屈に、妥協なくたたかっている。クアンチでおこなわれているたたかいは、新しいひとつの英雄詩となっている。北ベトナムと南ベトナムは奇跡の勢力のようにたたかっている。アメリカの巨大な空・海軍力もベトナム人民を屈服させることはできずにいる。それどころかアメリカの侵略的意図は、わが人民の力によってうちくだかれつつある。
 われわれは平和な、再統一された、独立、民主、繁栄の強大なべトナムを実現するため、われわれの革命を堅持する決意である。


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